◆重篤副作用疾患別対応マニュアル「ジスキネジア」が改訂されました。

2022.6.10 UP

 厚生労働省は今年2月、重篤副作用疾患別対応マニュアル「ジスキネジア」を11年ぶりに改訂しました。

 https://www.pmda.go.jp/files/000245263.pdf

 旧マニュアルは情報の古さや不備が目立つ内容になっていたため、当会は3年前に改訂担当者に詳細な修正要望書を提出していました。そのかいもあってか、新マニュアルでは随所に概ね妥当と思える修正が入りました。

 遅発性ジスキネジアに関して、第一世代と第二世代の抗精神病薬で発症率に以前考えられていたほどの大差はないことや、ベンゾジアゼピン等でも発症しうることが明記され、患者の実際の重症感を軽んじるような記述や誤解を招きそうな統計値が削除され、薬物治療の内容が一新され、重症の場合に検討しうる脳深部刺激療法(GPi-DBS)の説明が追記され、全体として早期の発見と対処が重要なこと、症状を見逃さないよう努めるべきことが強調されました。

 現状を鑑みて8割方は満足できる内容になっていますが、まだ完全とは言えません。遅発性ジスキネジアの説明で呼吸器の症状に触れられていないことはその一つと言えます。

 横隔膜などの呼吸筋にジスキネジアを発症する呼吸器(呼吸性)ジスキネジアは、遅発性ジスキネジアの7%の患者に認められるとする文献があります。呼吸困難感や胸部痛が自覚され、重症化すると生命のリスクが生じる場合もあるとされています。

当会の会員さんでも呼吸困難を訴える方が何人かいらっしゃり、全国ではそのような方々が相当な人数に達する可能性があります。

医師の間でもまだ認知度が低いようで、脳神経内科の主治医から呼吸困難感を心因性の症状として片付けられたとの報告も受けています。こうした誤解を無くすため、このマニュアルにはあと一押しの追加修正が必要と言えます。

 遅発性ジスキネジアについては、総合的な参考情報が乏しく、このマニュアルのたった10ページほどの記述が重要な意味を持ちます。(同マニュアルでは「抗パーキンソン病薬投与時のジスキネジア」についても解説されています。)