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眼瞼痙攣

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 眼瞼痙攣は、中枢神経系(脳)の異常により、眼輪筋が自分の意思に反して(不随意に)収縮を起こし、目を開けにくくなる病気です。またほとんどの場合、こうした運動症状と並んで、まぶしさや目の違和感・痛みなどの感覚異常も伴います。

 一方、多くの方は、目の使い過ぎや睡眠不足によって瞼がピクピク動く現象を眼瞼痙攣と勘違いしてしまいますが、これは別の症状で、通常は短期間で自然に治ります。医療関係者でも両者を混同している人が多いようなので、ご注意ください。

 

 今までの眼瞼痙攣の解説では、瞼の不随意運動が中心症状として詳しく説明される一方、感覚異常の方はあまり強調されてきませんでした。

 ところが、実際には運動症状よりも感覚異常を訴える患者さんの方が多いようで、そのような感覚異常を主訴とする眼瞼痙攣を患者さん自身も担当医も「眼精疲労・ドライアイ」と思い込んでしまう傾向があり、また事実ドライアイとの合併例も多いために、ジストニアを扱う医師でさえ眼瞼痙攣を見落とすことがあるようです。

 そのようななか、最近になって、視覚過敏などの感覚異常もまた眼瞼痙攣の主症状であることが強調される流れになってきています。

 

 眼瞼痙攣の国内患者数は、ごく軽い症例まで含めると数十万人レベルに達するとの推定もあります。重症化すると目を全く開けられなくなりますが、そこまで進行するケースは少なく、たいていの場合、発症から数年間ほど悪化した後は同程度の症状が続くと言われています。軽快する人や、なかには寛解する人もいますが、寛解率はかなり低いようですし、寛解後に再発する場合もあります。

 眼瞼痙攣は局所性ジストニアの一型ですが、近接する他の部位(口周り・舌・顎・首・喉など)のジストニアと併発して、メイジュ症候群と呼ばれる分節性ジストニアになることもあります。

 

○発症の誘因

・目に負担を与える仕事や生活習慣が続いていた

・向精神薬、特にベンゾジアゼピン系の睡眠薬・抗不安薬の服用や急な減断薬

・パーキンソン病を患っている

・精神的ストレス(うつ病や抑うつ状態を含む)

※一般に薬剤性ジストニアは抗精神病薬によるものが多いですが、眼瞼痙攣に関してはベンゾジアゼピン系薬物(正確にはマイスリーやデパスなどの非ベンゾ系まで含む「ベンゾジアゼピン受容体作動薬」)による誘発が多く報告されています。

 

○具体的な症状

・目が勝手に閉じようとする。目を開けにくい

・光に対して異常なまぶしさや痛みを感じる

・目に不快感・異物感を感じる

・瞬きが多い

・目がいつも乾いている

※前記のように眼瞼痙攣はドライアイを合併していることが多く、またドライアイと誤診されることもよくあります。

 

○特徴

 サングラスをかけて目に入る光の量を減らす、側頭部や頬を押さえる、マスクをする、ガムをかむ等の動作によって目を開けやすくなる。片目を閉じるともう片方の目を開けやすくなる。〔感覚トリック〕

 

○治療

 眼瞼痙攣は中枢神経系(脳)から来る神経伝達の異常に原因があり、今のところ根治する方法はありません。対症療法として以下のようなものがあります。

 ボツリヌス治療を受けるだけなら一般の眼科や神経内科でも対応できる所がありますが、目の異常と神経との関係に詳しい神経眼科の方が、より専門的な診断と治療を期待できます。

1.ボツリヌス治療

 眼瞼痙攣治療の第1選択はボツリヌス療法であり、商品名はボトックス(ボツリヌスA型毒素)として知られています。目の周辺筋肉に数カ所、3〜4ヶ月おきに打ちます。治療費は3割負担で1回につき1万4千円程度です。以前は約3万円でしたが、半分の50単位の商品が登場したことで、だいぶ安くなりました。

 このボトックス注射は筋肉を強制的に弛緩させるため、瞼の不随意運動には一定の効果を現します。ただし、感覚異常にはそれほどの効果は期待できません。たまに感覚異常も和らいだという話も聞きますが、添付文書の副作用の説明には羞明(視覚過敏)の項目もあり、かえって感覚異常が悪化するケースも起きているので注意が必要です。

 また、筋肉につながる末端の神経伝達をブロックするという作用機序からも分かるように、あくまで対症療法ですので、あまり過度には期待せず、いくぶん良くなる程度と思っておいた方がよいでしょう。

2.眼輪筋切除術

 他の有効な治療法として、眼輪筋切除術があります。ただし、これもボトックスと同様に一時的な緩和効果を期待するものであり、術後に2年3年と経過するにつれ、元の状態に戻っていく傾向があることを念頭に置いておく必要があります。

3.外科手術

 ボトックスで改善が見られない難治症例や他の頭頸部にまで拡がったメイジュ症候群の場合は、脳外科手術(脳深部刺激術=DBS、凝固術)の対象になり得ます。ただし、認知機能の低下やろれつが回らなくなるなどの副作用も報告されているので、慎重に検討する必要があります。

4.内服治療

 補助薬としてトリヘキシフェニジル(アーテン)やクロナゼパム(ランドセン、リボトリール)、ゾルピデム(マイスリー)が処方されることもありますが、効果は限定的です。クロナゼパムやゾルピデムは眼瞼痙攣の発症原因にもなりうるベンゾジアゼピン受容体作動薬であり、連用により症状を悪化させる場合もあることが指摘されているため、注意が必要です。

5.反復経頭蓋磁気刺激療法

 研究段階の治療法として、反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)があります。効果があるとの報告もあるようですが、臨床研究を行なっている一部の病院でしか受けられません。

6.非主流の治療法

 漢方薬(抑肝散など)や鍼灸、マッサージ、サプリメント等で症状が改善したという話も聞かれます。しかし、このような治療法の結果については情報が少ないため、確かなことは断定できません。当会でも試した方からの報告をお待ちしています。

7.日常の工夫

・まぶしさを軽減する遮光グラスの使用。サングラスも使えますが、サングラスは目に入る光全体を均一に弱めるため視覚像が暗くなるのに対し、遮光グラスはまぶしさを感じる光の領域を弱めながらも適度の明るさを保つという違いがあります。

・まぶたを持ち上げるクラッチ眼鏡の使用。単に物理的に持ち上げるだけでなく、感覚トリックも応用しています。

・マスクをしたりガムをかんだりすることで感覚トリックが働き、症状を軽減できる場合があります。

・重症の場合は、パソコンやスマートフォンの画面読み上げ機能を利用し、外出時には白杖を使うなどして対応します。

8.薬剤性の場合 ― 可能であれば原因薬の中止

 一般に薬剤性ジストニアは抗精神病薬で発症することが多いですが、眼瞼痙攣の場合は、睡眠薬・抗不安薬として使われるベンゾジアゼピン受容体作動薬  ―  エチゾラム(デパス)、ゾルピデム(マイスリー)、ブロチゾラム(レンドルミン)その他  ―  による誘発が多く報告されています。

 薬剤性の眼瞼痙攣の場合、可能であれば、発症後できるだけ早い時点で原因となった薬を中止することにより、回復する可能性は高まります。ただし、上記の薬はいずれも連用により依存を形成しやすいため、1か月を超える長期使用後の断薬は念のため慎重に少しずつ行わないと、人によっては重い離脱症状に見舞われることがあります(急にやめても大丈夫な人もいますが、個人差があります)。また、患者さんによっては、精神症状との関係で原因薬をやめられない場合もあります。

9.ドライアイを合併している場合

 眼瞼痙攣はしばしばドライアイを合併していますが、その場合は点眼や涙点プラグを併用する方法が効果的です。ただし、このような対応は眼科でしか行えません。