2024〜2026

眼瞼痙攣・眼球使用困難症患者の救済に尽力された若倉雅登先生がご逝去されました

2026.7.13 up


追悼 若倉先生ご逝去の報に接して
眼瞼けいれん・眼球使用困難症などの患者を大勢診療し、その福祉的救済にも尽力されてきた元井上眼科病院名誉院長、NPO法人目と心の健康相談室副理事長の若倉雅登先生が、5日前の7月7日にすい臓がんによりご逝去されました。
眼球使用困難症候群協会に所属しながら同先生と協力して要望書の提出など行ってきた当会として、改めて先生のこれまでの素晴らしいご活動に思いを馳せつつ、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
若倉先生には、医師および人間として稀有な資質がおありでした。
医師としては、既存の医学的概念に囚われることなく、現実の患者をあるがままに深く診察・調査され、その正確な病態を新たな概念やカテゴリーによって「掬い上げ」てこられました。
かくして、まぶたの不随意運動(ジストニア)が中心だった従来の眼瞼けいれんの概念を、感覚過敏(羞明・痛み等)や精神症状にまで押し広げ、さらには極度の光過敏や多様な身体症状まで伴う眼球使用困難症候群という新たな概念で包括し、それを中枢性感作症候群の一つとして位置づけました。この若倉先生の創造的な病態理解には十分な説得力があると思われますが、今後さらに後を継ぐ研究者による医学的解明が進むことが期待されます。
1000人超の症例調査を実施され、ベンゾジアゼピン薬が眼瞼けいれんの誘発因子になりうる事実を客観的に裏付けたことも、先生の大きな功績でしょう。その際には「ベンゾジアゼピン眼症」という注意喚起的な新語が作られました。
また、「光過敏脳」という新概念を巧みに使った先生の最近の雑誌インタビューでは、スマホに依存した生活が常態化する中、幼少期から人工的な光やディスプレー環境に過剰にさらされている若年層に眼球使用困難症の発症リスクが急増している危険性があることを警告されました。
若倉先生の中で、こうした新概念による医学的な「掬い上げ」の活動は、既存の公的救済制度のはざまで不合理に苦しんでいるその対象患者たちを何とかして福祉面で「救い上げ」ようとする温かいヒューマンな活動と常に表裏一体のものでした。
そのことは、2012年の障害年金に関する専門家会合での主張(その結果「眼瞼痙攣」の文言が初めて認定基準に盛り込まれた)から、各種メディアでの啓発活動を経て、厚生労働副大臣への3度の要望書提出(その結果として実態調査が実施され、研究班が結成・継続されてきた)に至るまで、ずっと一貫しています。
このような2つの「すくい(掬い・救い)上げ」に尽力されてきた若倉先生の圧倒的なパワーと人間愛に、今さらながら深い敬意を覚えます。
先生が最後、実現しきれずに終わった患者の福祉的救済については、今後、関係者が意見交換しながら心を一つにして取り組み、必ず実現させなければならないことと思います。

今回、急な訃報に肩を落とされた方もいらっしゃるかもしれませんが、若倉先生が一番心配されていた眼球使用困難症の患者さんの診療については、同先生と近い関係にあった以下の先生がたに受け継がれる体制となります。
●澤田 真如(さわだ まこと)先生 - 麻酔科(ペインクリニック)の医師で、自身も会社設立の過程で光過敏を発症されたことから、低光刺激のディスプレイや照明の研究開発に携わるようになったそうです。その後、若倉先生や目と心の健康相談室の荒川和子さんと知り合い、同相談室と連携する形で、今年4月に光過敏患者を専門に診療する「光と音のクリニック」を御茶ノ水に開設されました。 https://hikari-oto-clinic.jp/
●山上 明子先生 - 井上眼科クリニック 神経眼科外来で眼瞼痙攣のボツリヌス治療などされています。井上眼科で若倉先生の後を継ぐ神経眼科の先生です。 https://www.inouye-eye.or.jp/.../examine/outpatient/nerve/
●原 直人先生 - 神奈川歯科大学附属横浜クリニック・横浜研修センター 眼瞼痙攣・頭痛眼痛羞明外来にて診療されています。 厚労省の眼球使用困難症研究班に所属し、この症状に対する専門的研究も進めておられます。 https://www.hama.kdu.ac.jp/.../optha.../opthamology_009.html
また、 ●目と心の健康相談室では荒川和子さんらが引き続き眼球使用困難症の方々への相談支援をされています。荒川さんは目下、この症状を理解して患者さんに適切に対応できる医療従事者を増やす活動に専念されています。 https://metokokoro.jimdofree.com/
●自由が丘清澤眼科の清澤 源弘先生も、眼瞼痙攣への医学的対応を知り尽くしておられ、頼りになる先生です。 https://jiyugaoka-kiyosawa-eyeclinic.com/.../gankenkeiren/
※以上のほか、眼瞼痙攣や眼球使用困難症に比較的理解のある医師は、以下の神経眼科相談医の中に見出すことができると思われます。 http://www.shinkeiganka.com/consult/

障害年金法研究会主催の10周年記念シンポジウムの開催について

2025.10.1up


障害年金は、障害のある方々が生活を維持し、生きていくために必要不可欠なものです。しかしながら、障害年金を必要とする人すべてに行き届いているとは言えません。

ジストニア・ジスキネジア患者の場合も、症状が重症レベルまで進行しないと救済されませんし、不随意運動に伴って強い痛みなどがあっても、見た目の症状が軽度だと、障害年金の受給は難しい状況となっています。


眼瞼痙攣の場合は、重症化してほぼ視機能が使えず、日々の生活が高度に障害されていても、現行制度下では基本的に2級以上の障害年金を受給できません。

また薬剤性の場合は、副作用・離脱症状による強い痛みや感覚障害を併発していても、受給は困難です。

顎口腔ジストニア・ジスキネジアの場合は、生きる上で必要な2つの基本的機能である食べることと会話することが阻害されるにもかかわらず、なかなか受給できません。


こうした障害年金制度の不合理性は、現行制度が生活・就労上の困難さの程度に基づいて救済する「社会モデル」となっておらず、身体の機能障害の程度を医学的な測定値(検査結果)に基づいて等級分類する「医学モデル」であることから生じています。

つまり、医学的な検査で異状が検出されないと、どんなに生活や就労に障害があってもなかなか救済対象にならないのです。

この他にも、「初診日」証明の困難なケースがあることや、書類だけで審査する体制など、改善すべき欠陥が数多く指摘されてきました。


こうした理不尽な制度の改革を目指して、弁護士や社会保険労務士などで構成する「障害年金法研究会」は、国へ提言書を提出したり、広く社会に訴えるための啓発イベントなどを開催してきましたが、この度、設立から10年を迎えるにあたり記念のシンポジウムを開催します。

このシンポジウムの第2部のパネリストには、当会も大変お世話になっている安部敬太社労士も参加します。


このような制度改革は患者当事者も関心を持ち、声を上げていかないとなかなか前に進みません。どうか皆さまの積極的なご参加をお願いいたします。

また、拡散にもご協力ください。

申し込み方法など詳細については以下をご覧ください(Zoom参加できます)

https://tinyurl.com/28boq2r5

11月3日(日/祝) 取り残されそうな人を地域で支える~眼球使用困難症候群を一例に~【NPO法人目と心の健康相談室】

2025.10.1up


眼球使用困難症候群(PDES)の人々を地域で支えていくにはどうすればいいか、このことを考えるイベントが11月3日(月・祝日)14時~16時30分に開かれます。

行政レベルでの公的救済実現への道をなかなか迅速に切り開けずにいるなか、当事者が地域の中で孤立せず、理解と安心の中で過ごせるようにするにはどうしたらいいのでしょうか。

関係者の話を聞いて一緒に考えてみたい方は以下の案内をご覧ください。

https://www.sagamaru.org/group_event/14856/


一方、若倉雅登先生がかねてから警鐘をならす「光過敏脳」について『週刊新潮』が掲載している記事が、以下からネットで読めるようになりました。

https://www.dailyshincho.jp/article/2025/09201056/?all=1


また、サピエ(視覚障害者等情報総合ネットワーク)にはすでに同記事の音声デイジー版が上がっています。

「週刊新潮」で検索すると上位に最新号が出てくるので、それにアクセスして画面下部に表示されるバックナンバーで9月18日号を選択し、ダウンロードしてください。

障害年金の抜本改革を目指すシンポジウムが開催されます

2024.10.15up

たまたま身に負った病気やけがのせいで失職に追い込まれた。再就職は当面無理であり、療養生活を続けなければならず、元々経済的余裕はあまりなかったのに、新たに遠方の病院への通院費が派生した。…こうした不安な状況でも生活を支えてくれる国の基本的制度の一つが障害年金のはずですが、現実には必ずしもそうなっていません。

眼瞼痙攣が重症化して自力で瞼を開けられない事実上の盲目状態になった方、重い羞明により一日中暗幕を張った暗闇の中でしか生活できない方でさえ、現行制度下では基本的に2級以上の障害年金を受給できません。国保の場合であれば自動的に不支給となります。

また、薬剤の副作用・離脱症状等による強い痛みや感覚障害を併発しているジストニア・ジスキネジア患者の場合も、見た目の不随意運動が軽度だと、障害年金の受給は難しくなりがちです。

(※ついでに言えば、PMDAの障害年金を受けている薬剤性のジストニア・ジスキネジア患者も年間3人程度という微々たる人数であり、PMDAの制度にもまた別の大きな欠陥があります。)

こうした理不尽な結果を生み出している根本原因は、身体の機能障害の程度を医学的な測定値に基づいて等級分類した障害認定基準にあります。目の障害で言えば、「視力」や「視野」のように測定可能な機能障害が優先的対象とされ、それ以外の障害(感覚障害や内部障害の一部など)は二次的な扱いになります。

「医学モデル」に基づいて組み立てられた制度のため、生活や就労に本当に困っている一部の障害者が恩恵を受けられない現実があります。

こうした不合理な面を持つ障害年金制度を、「医学モデル」ではなく、本来の生活・就労上の困難さの程度に基づいて救済する「社会モデル」に転換すべきだという意見は以前からありました。

またこの他にも、「初診日」証明の困難なケースがあることや、書類だけで審査する体制など、改善すべき欠陥が数多く指摘されてきました。

このたび、こうした制度改革を待ったなしの課題と見なして今年3月に国に提言書を提出した障害年金法研究会所属の弁護士や社労士の先生方が、関係する議員や医師、当事者と一緒にこの問題を取り上げ、広く社会に訴えるため、10月31日(木)12~14時にシンポジウムを開催します。

当会もお世話になっている安部敬太社労士が基調報告され、眼瞼痙攣・眼球使用困難症をご専門とする若倉雅登先生も加わってパネルディスカッションが行われます。会場参加(参議院議員会館 ← 当初の衆議院第二議員会館から変更になりました)とオンライン参加のどちらも可能です。

申し込み方法など詳細については下のボタンを押してください。

障害年金シンポジウムのご案内

この問題に関心を持たれた患者さんとご家族、支援者、関係者の皆さん、是非とも参加をご検討ください。また拡散にご協力ください。

よろしくお願い致します。